【小説 » 日本人作家(や-わ行) アーカイブ】
バベル島
08/01/19 (土) 23:13

若竹七海「バベル島」光文社文庫
満足度:★★★
単行本未収録で、ホラー的要素を含む11編を収録した短編集。
全て20世紀中に書かれたのに、今までまとめられてなかったことが意外です。他にもまだまだ未収録の短編がありそうですね。
「のぞき梅」はラストで二度ぞくっときました。梅はめでたくて健康にも良いイメージなのに、ホラーでも全く違和感ないもんですね。「人柱」は一条風太が懐かしい。「バベル島」は短い作品なのにスケールがでかい。葉村寅吉ってもしや・・・?
独立した短編でどれも短かったせいか、なんとなく物足りない感じ。それに、やっぱり神出鬼没な彦坂夏見がいないとつまらないなぁ(笑) でも、相変わらずと言うか流石と言うか、人の悪意(毒)を描くのは巧い。
...close
タグ :
このエントリーに登録されているタグはありません
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (0)
| トラックバック(0)
天平冥所図会
07/11/20 (火) 15:50

山之口洋「天平冥所図会」文藝春秋
満足度:★★★★★
平城京を舞台に葛木戸主と和気広虫夫妻が権力と戦う歴史ファンタジー。
政治的な話が中心なため重くなりがちなところをファンタジー仕立てにしてあり、装画もほのぼのした絵でとっつきやすく、謎解き要素もあって楽しめました。全体的な流れを見ると、藤原仲麻呂盛衰記ですね。幽霊と神様と吉備真備の長女についてのトンデモ設定を除けば、純粋な歴史小説と言えそうです。ファンタジー部分では、葛木家の氏神・一言主命がいい味出してます。関西弁で飄々としてるのが可笑しい。民事不介入って~(笑)
4話中、聖武天皇の冥福祈願のため東大寺に献納する品々の鑑定とリスト作成にまつわる「正倉院」が特に面白かったです。鑑定作業そのものは興味深いけど、そこには様々な思惑が絡んでいるから厄介。この機会を利用して権力を手にしようとする者、政敵を追い落とそうとする企む者、上からの命令に翻弄される下級役人の苦労。そんな状況での戸主の言葉に痺れました。この台詞を言い放った相手が相手だけに、めちゃめちゃ爽快。
「味方だと? 敵だと? そんなもんはどっちでもいい。おれの仕事を邪魔するやつは、誰であろうとおれの敵だ!」(P.173)
先月読んだ「サラシナ」と時代が近いため、登場人物がかなり重なっていました。奈良時代は結構好きなんですが、平安時代や戦国時代に比べると地味なのか、小説の舞台になることが少なくて寂しかったんです。奈良時代を舞台にした作品がもっと増えるといいのになぁ。
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (2)
| トラックバック(1)
ボトルネック
07/11/10 (土) 15:39

米澤穂信「ボトルネック」新潮社
満足度:★★★
2年前に亡くなった恋人を弔うため、東尋坊を訪れた僕。そこで強い眩暈に襲われ、崖から落ちた・・・はずだったが、気付いたらそこは見慣れた金沢市内の川のほとり。自宅へ戻ってみると見知らぬ人物がいた。
崖から落下した瞬間、主人公・嵯峨野リョウは、自分が存在せず、生まれなかった姉・サキが存在する世界へ来てしまいました。いわゆるパラレルワールドってやつですね。リョウの世界とサキの世界は、似ているようで微妙に異なっています。リョウはサキとの会話や街を歩くことで、自分の世界との「間違い探し」をするのですが、これが精神的にかなりキツい。その違いには直接的間接的にサキが関わっていて、一つ間違いを発見する毎にリョウは己の無力さを目の前に突きつけられるわけです。何よりも辛いのは、死んだはずのノゾミが生きていて、性格まで違ってることでしょうね。アイデンティティをゆるがすには充分過ぎるサキの世界の現実は、高校一年生の少年にとってあまりにも酷。多分、大人でも耐えられる人はいないんじゃないかな。ラストの一文がまた、おろしたての剃刀のようでした。この後のリョウの行動をどう予想するかで、その人の性格が分かりそうですね。
かなりビターな青春小説ですが、不思議と後味の悪さは残りませんでした。
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (0)
| トラックバック(0)
幸福ロケット
07/01/28 (日) 00:23

山本幸久「幸福ロケット」ポプラ社
満足度:★★★★★
本が好きな山田香な子と、深夜ラジオ好きのコーモリこと小森祐樹。小学五年生の爽やかな初恋物語。
四季さんの2006年のベスト本を拝見して気になった作品。これが大当たり! 爽やかで可愛らしくて淡い淡い初恋物語でした。特に印象的だったのは「京成本線のテン・ミニッツ」。電車のゴトゴト揺れるリズムに、二人の胸のドキドキが同調してるかも、なーんて思いながら私もドキドキ。また、コーモリの優しさにきゅんとしました。小学生のくせに紳士なんだもの。
本を二人を繋ぐアイテムにしたこともニクい。読書に興味がなかったコーモリから、「本を読むのも楽しいけど、本について山田と話すのも楽しいもんな」という台詞が出てくるようになるとは。恋の力は偉大だ。コーモリに本を貸す本を選ぶため父親の本棚も覗くようになり、香な子自身も読書の幅が広がっていきます。お互いに良い影響を与え合える関係っていいものですね。
周囲の大人たちも皆それぞれに魅力ある人たちでしたが、特に素敵だったのが担任の鎌倉先生。大学時代にモデルをやっていた長身の美人で、ジャガーを乗り回してるんです。それだけでも十分絵になるんですが、性格がこれまた素敵。教師モードオンの時は大変厳しく、教師モードがオフの時は話の分かるおねーさん。とにかくオンオフの切り替えがすごく上手いんです。女の私でも憧れてしまう。なのに、30過ぎて独身とはこれ如何に。
香な子の恋のライバルであるノドカも面白い存在でした。クラスでトップの可愛らしさなのに、会話の中に英語を混ぜてしまう頓珍漢さ、このギャップが可笑しかった。でも、最後の最後に、大人になったらイイ女になりそうな予感を抱かせました。彼女にもいつか素敵な彼ができるよう祈りたい。
懐かしくも甘酸っぱ~い気持ちに浸っていたら、自分の初恋まで思い出しちゃいました(^^ゞ
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (2)
| トラックバック(1)
星兎
07/01/27 (土) 00:20

寮美千子「星兎」パロル舎
満足度:★★★★
人の溢れるショッピング・モールのまんなかで、ユーリはうさぎに声をかけられた。「きみ、かわいいね」
これは「ぶたぶた」以来の衝撃でした。生きているうさぎに話しかけられるだけでも驚きなのに、「きみ、かわいいね」の次に出た言葉が、「ねえ、ぼくとお茶飲みにいこうよ」。わははは、これってナンパでしょう? うさぎにナンパされるなんて、経験したくてもできるもんじゃありません。ドーナツが大好きで、シナモン・シュガーを小さな山脈ができるくらいにたっぷりかけて食べる、超甘党のうさぎ。前歯でちょこちょこかじる姿を想像すると……うわー、うわー、カワイイー! 名前もどこから来たのかも分からない。人間の言葉なら何語でも分かるのに、うさぎとは言葉が通じない。何もかも謎だらけ。私はすっかりうさぎの虜になってしまいました。このうさぎに「三月うさぎ」のコスプレをさせてみたい。
ところで、「小惑星美術館」「ラジオスター レストラン」「星兎」の三作は、主人公の名前が全てユーリでした。環境が微妙に異なるので、どうやら同一人物ではなさそうです。三人のユーリには何かしらの繋がりがあるのでしょうか。(例えば、三作はパラレルワールドになっていて、それぞれの世界のユーリ、とか?)
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (0)
| トラックバック(0)
ラジオスター レストラン
07/01/27 (土) 00:13

寮美千子「ラジオスター レストラン」パロル舎
満足度:★★★
星祭りの夜、ユーリとイオは掟を破り、ギガント山に登った。暗闇の中から現れた牙虎を追いかけていると、天文台のあるあたりで衝撃が。気がついたユーリを出迎えたのは、旧式ロボットのラグだった。「ガガピー、ガピー。ラ、ラジオスター・レストランへようこそ」
ユーリとイオはラジオスター・レストランに招待されたお客様でした。ただ、運悪くイオは乗り遅れてしまい、もてなしを受けることができたのはユーリひとりになってしまいました。天井のドームいっぱいに星が瞬き、うっとりするような宇宙の音が聞こえてきます。極めつけは銀河全天より選りすぐった最高の品々を使った、銀河料理のフル・コース! 土星のカクテルに始まり、星の卵のキャビア、水素のスープ、銀河の火魚、草食竜イグアノドンのフィレ・ステーキ……目と舌が喜ぶような不思議料理の数々に、私も想像力を刺激されっぱなし。どことなく「銀河鉄道の夜」を思い出させます。脳内が色彩と神秘的な音で溢れてたんですよね、ここまでは。牙虎のヨルの案内で失われた者たちの土地へ行くあたりから、話の流れが少し変わります。いや、変わる、ではなくて、いよいよ核心に迫り出したと言った方が相応しいかもしれません。作者からのメッセージがいよいよ明らかになってくるのですから。それが重大かつ真剣に向き合わなければならない問題であることは、よく理解できます。が、はっきり言って興醒め。せっかく夢心地でいる時に、現実と向き合いたくはないもの。それに、言葉を重ねれば重ねるほど、話がどんどん重くなっていくんですよね。もう少しさらっと流してくれたほうが、かえって心の中に留めておけたかもしれません。
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (0)
| トラックバック(0)
彩雲国物語 心は藍よりも深く
05/10/09 (日) 00:19

雪乃紗衣「彩雲国物語 心は藍よりも深く」角川ビーンズ文庫
評価:★★★★★
茶州の山村で謎の奇病が流行りだした。影月、秀麗は、茶州牧として出来得る限りの手を打つことに奔走する。
引き続き影月編。影月と明月の関係が少し分かり、明月の存在がさらに謎めいてきました。影月編は次で完結とのことですが、一体どうなるんでしょうねぇ。
ところで、秀麗は何時の間にあんな交渉術を身に付けたのでしょう? おちゃらけた軽ーい言い回しはまだまだ子供?と思うものの、事前の手回しもよく、ポイントを抑えた鋭い指摘と提案。海千山千の全商連の面々を相手に、堂々と駆け引きしてしまうなんて。官吏として成長した姿に目頭が熱くなりました。そして、緊急朝議でのこの一言に尽きます。
「私たち官吏が、守るべきものは『誰』ですか?」(P.185)
官吏にとって最も大事なことであるだけに、重い一言ですね。難癖をつける他の官吏たちを黙らせるには十分。そればかりではなく、もう誰も秀麗を止められないことを知らしめました。この言葉に一番ショックを受けたのは、やはり劉輝でしょう。自分の手からどんどん遠ざかっていくのを感じずにはいられなかったはず。今になって気持ちと立場の板ばさみで苦しむくらいなら、秀麗が後宮にいる間にお手つきしちゃえば良かったものを(をいっ^^;)
ペロリろラリほ~♪と相変わらず我が道を行く龍蓮ですが、突然の行動の真意が気になります。龍蓮に関してはとにかく予測不能なので、またあっと言わせることをしてくれるだろうと期待してます。ふと思ったのですが、龍蓮の突き抜けた天才っぷりには、神・榎木津礼二郎と共通するものを感じるんですよね。(榎さんは宇宙と交信したりすることはないけど)
それから、またしても気になる人物が! それは、黒州牧・櫂瑜。齢八十を超える身でありながら、今もって現役。しかも紳士でダンディ! 孫か曾孫のような年齢の秀麗をドキドキさせちゃうなんてすごいわぁ。こんな素敵なキャラはもっと早くに登場させて欲しかったな~。
今回、重要アイテムだったのは蜜柑。紅家で、府庫で、蜜柑が取り持つ人の心、って感じ。また、あの彼にはインスピレーションを!(笑) ともすれば重くなりそうな展開(特に影月周辺)でしたが、それを和らげるのに一役買ってました。元々蜜柑って癒し系な果物ですもんね。(炬燵とタッグを組んだら恐いものなし) 前回のきのこといい、彩雲国では季節先取り、というか季節の巡り方がはやいのかな?
民の命を守りたい。運、巡り合わせ、人の縁・・・全てを引き寄せたのは、二人の州牧の思いの強さなのかもしれません。まるで、彼らの思いを神が聞き届けたかのよう。ならばついでにもう一つ、少年と少女の思いも汲み取ってあげて欲しいものです。もうドナドナはたくさん。
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (0)
| トラックバック(1)
彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計
05/07/30 (土) 23:53

雪乃紗衣「彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計」角川ビーンズ文庫
評価:★★★★★
新年の朝賀のため、茶州牧・紅秀麗は王都へ行くことになった。王都・貴陽では朝賀の他にもう一つ大事な仕事がある。一方、茶州に残った杜影月の様子がおかしい。
茶家の問題も片付き、今度は若い州牧たちの政治家としての手腕が問われる段階となりました。茶州の将来を考えた彼ららしい対策案と、燕青や悠舜を始め官吏たちの心強いバックアップ。いよいよ新生茶州の始動ですね。
王都では、秀麗の根性、根性、ど根性(笑)をしっかり見せてもらいました。(でもいいのかな、未成年なのに(^^ゞ) 問題を乗り越えるたび、秀麗はどんどんシンパを増やしていくんですねぇ。いつも全力で体当たりできる若さが羨ましい。
私の中で、株が急上昇中なのは藍龍蓮。龍蓮ってなんか猫みたい。ふらっといなくなったかと思うと、絶妙なタイミングで現れ、さりげなく優しい(龍蓮の挿絵にきゅーんとしちゃいました)。またしても他の人は絶対にしないような凄い格好で現れたけど、そんなお茶目なところもカワイイ~♪ 登場シーンは決して多くはないのに、インパクトは誰よりも大きい。今回、彼の意外な部分が見えたり分かったりしてびっくり! ますます気になる存在となってます。
「漆黒の月の宴」を読んだ時、藍龍蓮と茶朔洵に対する秀麗の態度が不満だったんですが、前半にそのフォロー(ていうか、言い訳?)が。後半は、行間からもわ~んとアルコール臭が漂ってきそうでした(笑)
そして、影月編の開幕。そうなんですよね、彼のあの秘密も気になってましたが、さらに何かが起きようとしているようです。恋愛模様もより複雑になってきてますし、動向に注意が必要な人物も。あちこちで問題の種が一斉に芽を出し始め、クライマックスが近づいてきてるのを感じます。大立ち回りもなく、比較的静かな展開だった本書は、嵐の前の静けさでしょうか。
主人公たちの成長を見るのは楽しい反面、茶州編以降それぞれの進むべき道が分かれてきたようで、ちょっぴり寂しくもあり。
・・・というわけで、久々の王都編となりました。やっぱり王都組は、華やか&賑やかでいいですね!
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (4)
| トラックバック(3)
トリニティ・ブラッド Canon 神学大全
05/06/30 (木) 16:00

吉田直「トリニティ・ブラッド Canon 神学大全」角川スニーカー文庫
評価:★★★★★
第一部<正典> 文庫未収録の短編と「Reborn on the MarsVII 極光の牙」序章を収録。
第二部<神学> 設定資料を基にした謎解きと、書かれる機会を失った「過去編」と「極光の牙」以降のストーリー展開の紹介。
第三部<大聖典> 用語集。
未収録短編は、"ガンスリンガー"が主人公の2編。
「俺は人間(マン)ではない――機械(マシーン)だ」
脳の一部以外機械化されてるため感情が存在しない、とってもクールな"ガンスリンガー"。でも、時々すごく人間らしさを感じることがあるんですよねぇ。2編ともそれがよく現れているエピソードでした。何を隠そう、「トリ・ブラ」で一番好きなキャラクターが彼なのです(*^^*) (次に好きなのは"ソードダンサー"。憂いを帯びた美形って大好き♪)
注目すべきは第二部。「トリ・ブラ」ファンは必見です! アベルの過去や吸血鬼が吸血鬼となった理由などなどがここで解明されています。思ってたよりもさらに深い設定には驚きです。もし「過去編」が書かれたとしたら、SF色の強い作品になりそう。
もう一つ必見なのは、失われた物語のイメージをヴィジュアル化したという口絵。ショッキングな展開は、文字を読むより絵で見るほうがインパクトがあります。
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (0)
| トラックバック(0)
トリニティ・ブラッド R.A.M.シリーズ
05/06/30 (木) 15:30

吉田直「トリニティ・ブラッド R.A.M.シリーズ」角川スニーカー文庫
トリニティ・ブラッド Rage Against the Moons フロム・ジ・エンパイア
トリニティ・ブラッド Rage Against the MoonsII サイレント・ノイズ
トリニティ・ブラッド Rage Against the MoonsIII ノウ・フェイス
トリニティ・ブラッド Rage Against the MoonsIV ジャッジメント・デイ
トリニティ・ブラッド Rage Against the MoonsV バード・ケージ
トリニティ・ブラッド Rage Against the MoonsVI アポカリプス・ナウ
評価:★★★★★
長編の「R.O.M.」シリーズに対し、「R.A.M.」シリーズは「R.O.M.」より数年前の出来事が連作短編形式で綴られています。吸血鬼絡みの事件も勿論あるのですが、Axが現体制に不満を抱く新教皇庁や"騎士団"と戦う様子がメインのようです。「外伝」は、吸血鬼によって全てを失った悲運の美剣士、"ソードダンサー"の復讐譚。
「R.O.M.」より「R.A.M.」のほうが、派遣執行官それぞれの活躍が見られます。「R.O.M.」には出てこない派遣執行官も「R.A.M.」には登場してますし。でも、事件の派手さは長編だけに「R.O.M.」のほうが上かな。
「R.A.M.」の最終話「APOCALYPSE NOW」で完成しているのは前編のみ。後編はプロットが掲載されています。前編の続きも気になるのですが、「嘆きの星」と繋がる予定だったラストシーンを読めないことが非常に残念。
...close
Posted by sa-ki : Permalink
| コメント (0)
| トラックバック(0)