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大年神が彷徨う島
05/06/19 (日) 17:00

藤木稟「大年神が彷徨う島」徳間文庫
評価:★★★★
二十年に一度の秘祭で生神役に選ばれた娘の代役を引き受けた律子は、四国沖にある鬼界ガ島を訪れる。平家の落人伝説、陰陽道、生神様が伝わる島では、神罰という名の連続殺人事件が発生。律子から連絡を受けた朱雀十五は、鬼界ガ島へと赴く。
因習に満ちた孤島、見立て、連続殺人事件と、いかにもな横溝的展開。また、「『神訪い』の祭り」は、樹なつみ「八雲立つ」の「海神を抱く女」(7~8巻収録)を思い出しました。
そんな異様な雰囲気の中、神罰で片付けてしまいたくなるような不可能犯罪が立て続けに起きるのです。前半は恐怖を煽るかのようにじわじわと進み、朱雀十五が重い腰を動かすと一気にテンポアップ。奇怪な現象のトリックを暴き、次々に謎を解体していく様は爽快でした。久々にミステリらしいミステリを読んだ気がします。
元検事の人脈を強引に利用したり、キレのある推理を披露したりと朱雀十五らしさも出てはいるのですが、やはり出番が少ないと物足りないんですよね。朱雀十五は最初から最後まで出ずっぱりで、パンチの効いた毒舌をじゃんじゃん吐きまくって欲しい。・・・と思う私は変ですか?(^^ゞ
このシリーズの前作(「黄泉津比良坂、~」の2冊)は胃もたれしそうでしたが、本書は雰囲気も私好みで読みやすかったです。孤島と聞いただけで条件反射でのめり込んでしまうのは、ミステリファンの性でしょうか。
ところで。
律子君、本当は悪の黒幕なんぞは世の中にいないのだよ。(P.459)
という朱雀の台詞は、間違いなく京極堂を意識してますね。京極系と言われる著者のお遊びかな?
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本格推理委員会
05/06/15 (水) 17:00

日向まさみち「本格推理委員会」産業編集センター
評価:★★
舞台は小中高一貫のマンモス校・木ノ花学園。学園内の事件を解決するため、理事長・木ノ花あざみによって本格推理委員会が結成される。メンバーは知識担当の委員長・桜森鈴音、国家権力を盾にした暴力担当・楠木菜摘、超推理担当・木下椎、最強のパシリ・城崎修。4人は音楽室に出るという少女の幽霊について調査を始める。
まず目に付くのは、主人公の周りにいろんなタイプの女の子を揃えた、ある種のゲーム風な配置。キャラ萌えさせようという魂胆なのかと思えば、キャラクターにはさほど魅力が感じられず。ミステリとしては荒さが目立ち、すぐ分かるようなことを延々と引っ張るのが鬱陶しくもあり。主人公の心の傷も、ただ雰囲気が暗くなっただけで深みも重みもありません。「本格」とは名ばかりで、全体的に中途半端。ミステリとして評価する以前に小説としてどうなんでしょう。昨今のライトノベルはもっと読ませてくれるぞ。
学園内の問題を解決するという点では、本格推理委員会よりCLAMP学園探偵団のほうが余程役に立ってるんじゃないかなー。
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逆さに咲いた薔薇
05/03/30 (水) 18:06

氷川透「逆さに咲いた薔薇」カッパ・ノベルス
評価:★★★
女性を殺し、左足の小指を切断して赤い靴下を履かせる、という事件が続く。足の小指を切り取ることの意味は? 警視庁捜査一課の刑事・椎名梨枝は、友人・祐天寺美帆の意見を聞きに行く。
「最後から二番めの真実」で氷川透と推理対決をした祐天寺美帆が、安楽椅子探偵として再登場です。しかし、本書では著者らしいロジックは見られません。美帆の推理にもキレがなく、「最後から~」の時よりパワーダウンしてるんじゃないかとさえ感じます。それよりがっかりだったのは、左足の小指を切断した理由。もっと深い意味があるのかと期待していたのに。
さて、男社会の警察に籍を置く梨枝は、性差別に反発する気持ちがある一方で、守ってもらったことを嬉しく思う自分に気付きます。これはまぁ、警察小説のヒロインにありがちではありますが。美帆の方はさらに複雑。レズっ気があるのかと思えば、男性に対しては思いっきり意識しているような言動を見せます。元々素っ頓狂なお嬢様というイメージでしたが、変人ぶりはさらにパワーアップ!(そんなところより推理力をアップさせようよ^^;)
氷川透が探偵を務めるシリーズでは男から見たジェンダー問題を取り上げていますが、このシリーズでは梨枝や美帆を通して、女性から見たジェンダー問題を扱っているのだと思います。つまり両シリーズは、著者のテーマの表と裏の関係にあるのでしょう。
ところで、ネット書評について言及してる部分がありますが、あれは著者の本音でしょうか?
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ぼくと未来屋の夏
05/03/28 (月) 16:14

はやみねかおる「ぼくと未来屋の夏」ミステリーランド
評価:★★★★★
「未来を知りたくないかい?」
夏休みの直前、山村風太は駅前商店街で、旅をしながら未来を売っている未来屋・猫柳さんに声をかけられた。そして何故か山村家の居候となる猫柳さん。風太は小学校最後の夏休みを、猫柳さんと過ごすことに。
著者自身が
怪しげな探偵、超常現象に怪奇現象、人喰い小学校、首なし幽霊、人魚の宝物、神隠し、暗号。自分の好きな物を片っ端からこの本に放り込みました。
と言うだけあって、子供の好奇心をそそる物でいっぱい。まるで謎のおもちゃ箱のようです。
表紙を開いて最初に引き込まれたのは、見返しに描かれた髪櫛町の地図。地図を見るだけでわくわくしてしまう私は、あぁここで何かが起きるのね~と期待に胸を膨らませながら、しばらく地図を眺めていました。
探偵役の猫柳さんは、長身に黒い服を纏った本好き(猫柳さんが読んでいた本、『ラプラスの悪魔』『シュレディンガーの猫は、毒ガス室の夢を見るか』を読んでみたい!)で、夢水清志郎を彷彿とさせる人物です。夢水さんより猫柳さんのほうが若く、その分フットワークも軽いようですが(笑)
神隠しの森、人喰い小学校、戦時中神隠しにあった男が残した暗号、人魚の宝物といった町に関する謎を、作家志望の風太は小説に仕立て、少年名探偵WHOに推理させます。(作中、推理だけではなく、猫柳さんへの不満をネコイラズくんにぶつけてるのが可笑しい) とは言ってもWHOの推理はまだまだ未熟。猫柳さんがWHOの間違いを正しながら、謎を解いてくれます。猫柳さんが未来の名探偵を育てているともとれる、この微笑ましいシーンは大好きです。大人が安易に答えを与えてしまうのではなく、子供自身に考えさせるところなど、小学校教師をしていた著者らしさがよく出ていると思います。
「名探偵が事件を解決するのは、人を幸せにするため。間違えた推理で、だれかを不幸にするなんて言語道断だよ」(P.189)
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百万の手
05/03/06 (日) 21:57

畠中恵「百万の手」ミステリ・フロンティア
評価:★★
中学3年生の音村夏貴は、不審火で親友・正哉を失い、悲嘆にくれていた。すると、遺品となった携帯電話から正哉の声が聞こえ、画面には正哉の顔が映っていた。自分の代わりに不審火の真相を調べてほしいと、正哉は夏貴に頼む。
文章は読みやすいので、読むだけならさくさくと進みます。しかしながら、本書がミステリだとはとても思えません。肝心なことは何一つ判然としていないのですから。最も納得できなかったのは、最初の事件の動機です。(以下反転)放火犯によると、「首を突っ込んでくるから悪い」とのことですが、日野家の人間と放火犯との関係が不明です。直接接触したとは何処にも記されていませんし、何に首を突っ込んできたのか分かりません。放火犯にとっても、重要な問題は他にあり、日野家の問題はどうでもいいことのはずです。(ここまで)これで論理的な説明がされていると言えるでしょうか? また、正哉の両親は、寝ていたわけでもないのに、何故自力で逃げられなかったのでしょう?
夏貴の母親・彌生の態度が豹変することも不自然です。息子に対する気色悪いくらいの過干渉が、婚約者・東の登場以降、何故だかぴたりと治まります。亡夫の面影がある夏貴にあれだけの独占欲を見せたのは、今も彼女の心の中には夫が生きているからではないのですか? それが他の男と付き合っていたとは、驚きとしか言いようがありません。(互いの生活サイクルからみて、夏貴に隠れてデートする時間があったことも不思議)
相棒交代と路線変更も気になる問題です。夏貴の相棒が代わったことを機に、ファンタジーから大きく路線が変わっていくこととなります。思いのほか、重いテーマが潜んでいたんですね。事件の根幹は正哉の手に負えるものではない、そのために交代劇が仕組まれた、といったところでしょうか。それならいっそ、携帯に正哉を蘇らせるなど浮世離れしたことをせず、初めから後半の相棒と組ませて、夏貴の意志で真相究明させてもよかったのでは? 夏貴自身、正哉を止められなかったことを悔やんでいたし、火の様子にも疑問を抱いていたんですから。
彌生にしても、正哉にしても、あまりにもなおざりな扱いなので、著者が自作のキャラクターに愛情を持ってなさそうに見えて仕方ありませんでした。
文句ばかり書いてしまいましたが、最後くらいは良い話で締めたいと思います。東の存在は非常に大きかった。苦労してきたことで培った強さと優しさ、何もかも承知の上で温かく包んでくれる懐の大きさは、今の音村母子に最も必要だと思います。東のほうも、諦めていたものが手に入る嬉しさでいっぱいなのが伝わってきます。彼の信念や生き様は、夏貴にも良い影響を与えることでしょう。
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ヘビイチゴ・サナトリウム
05/01/31 (月) 22:20

ほしおさなえ「ヘビイチゴ・サナトリウム」ミステリ・フロンティア
評価:★★★★★
中高一貫教育の女子校・私立白鳩学園で、生徒や教師の墜死事件が相次ぐ。自殺なのか、それとも他殺なのか? 2人の死者を出している美術部からは海生と双葉が、死んだ国語教師と懇意にしていた高柳教師が、それぞれ事件の謎を探る。
ポール・オースター『鍵のかかった部屋』、作中作、そして事件そのものとの関係が非常に興味深かったです。『鍵のかかった部屋』は探偵小説の枠組みを借りた文芸小説で、自分と他人との境界がくずれていく感覚を追求する作品だそうです。ならば本書は、『鍵のかかった部屋』の設定を取り込み、自分と他人の境界のくずれを利用した推理小説でしょう。
前半はサスペンス・タッチで進み、ラストに近づくにつれ本格ミステリの顔を覗かせるようになってきます。ある章のタイトルが、実はダブル・ミーニングなのだと後から気づかされるところなど、思わず唸ってしまいました。謎の究明については、真相に近づいてきたかと思えば呆気なくひっくり返される・・・が何度も繰り返され、その都度整理していかないと頭の中がぐちゃぐちゃになります。二転三転する推理に落ち着きが無い印象を受ける一方、手が届きそうでなかなか届かない真相との鬼ごっこは楽しくもありました。散々焦らされた後だけに、漸く真相に辿り着いた時には感無量でした。
全てを読了して感じたことは「これはマトリョーシカだ!」でした。bk1の著者コメントにも「マトリョーシカ」という言葉が使われていることから、やはり意識してああいう構造にしたのですね。
読了後、「鍵のかかった部屋」がどうしても読みたくなってしまい、オースターのニューヨーク三部作(「シティ・オヴ・グラス」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」)を買ってしまいました。三部作なのに何故か版元がバラバラなんですよねぇ。
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密室に向かって撃て!
05/01/30 (日) 17:30

東川篤哉「密室に向かって撃て!」カッパ・ノベルス
評価:★★★
とある警察のとある警官が逮捕しようとした男が、改造拳銃を取り出し発砲し、逃亡しようとして転落死してしまう。警官が死体に駆け寄ると、拳銃は何者かが持ち去った後だった。その後、会社社長宅で殺人事件が発生。犯行には問題の拳銃が使われていた。
「密室の鍵貸します」(レビュー)に続く、烏賊川市シリーズ第2弾。
事件が起きた十条寺邸には、「名探偵」鵜飼杜夫といつのまにか「探偵の弟子」にされていた戸村流平が居合わせていました。自らも被害に遭った(笑)鵜飼探偵が、「衆人環視の密室」から消失した犯人の謎を≪銃声のカウントダウン≫とともに解き明かします。
相変わらず「おふざけ」が見られますが、それほど気になりませんでした。私も著者のスタイルに慣れてきたようです。
前作での鵜飼探偵は探偵らしさをいまいち発揮できなかったようですが、本書では関係者を集めて論理的な謎解きを披露する場面もあり、探偵らしい顔を見せてくれました。ふざけているようでも見るべきところはちゃんと見ていたんですねぇ。
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密室の鍵貸します
04/11/03 (水) 23:46

東川篤哉「密室の鍵貸します」カッパ・ノベルス
元彼女が殺され、警察から追われることになった戸村流平。事件当夜はビデオ鑑賞をするべく、茂呂先輩のアパートを訪問していた。しかし、アリバイを証明してくれるはずの茂呂先輩も、同じ夜に殺されてしまった。アパートは密室状態で、中にいたのは先輩と流平の二人きり。二つの事件で容疑をかけられた流平は、探偵をしている元義兄を頼ることに。
これはコントですか? 確か私は本格ミステリを読んでいたはずなのですが。
・・・と言いたくなるような、緊張感のない巫山戯た文章が延々続きます。この作風は、読む人によって好き嫌いが分かれそう。ミステリに重厚さを求める人には向かないでしょうね。私は嫌いじゃないですが、感心するわけでもありません。う~ん、微妙だ。おいおい、と適当にツッコミながら読ませていただきました。(それはそれで楽しかったりして・笑)
刑事コンビも探偵も誰も彼も、どこか抜けてるんですよね。こんな調子で、本当に密室の謎を解明できるのか不安でした。そんな私の不安をよそに、あれよあれよと解決。巫山戯つつも、伏線はきっちり張ってあったんですね。私としたことが、ぼんやり読み過ごしてしまいましたよ。あの文章は読む側の緊張感まで奪うんだから。(それが狙いなのかも!)
トリックは面白いと思いますが、部分的に納得できないところも。人によって○○○を見る時の癖があると思うんですが、少なくとも私が流平だったとしたらあのトリックは使えないと思うなぁ。
有栖川さんの推薦文には、
ストライクゾーンからストライクゾーンに切れ込む鋭いシュートだ
とありますが、それはちょっと過大評価しすぎではないですか? フォークがすっぽ抜けたけど結果的にストライクが取れた、というのが私の印象なのですが。
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各務原氏の逆説
04/10/28 (木) 21:17

氷川透「各務原氏の逆説」トクマ・ノベルズ
各務原氏というのは、私立高校に勤務する用務員。そして、学園の生徒である「ぼく」は、何か困ったことがある毎に用務員室を訪れ、各務原氏を頼るのです。学園内で起きた生徒の変死事件の時もしかり。
各務原氏は事件解決のヒントを与えてくれるものの、名探偵とは言い難いかなぁ。「ぼく」にしても、ただワトソン役をこなしてるわけではありません。どちらにしても、宙ぶらりんなイメージです。
事件の解決についてもしっくりきません。特に最初の事件のほう。手段・方法は明確でも、肝心の動機をはっきりさせないままなので、もやもやした気分が残ります。登場人物たちの悪意も加わって、後味は良くありませんでした。そして、あるトリックの必要性には疑問を感じます。無くても特に影響ないんだもの。
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