【小説 » 日本人作家(た行) アーカイブ】
木苺通信
07/11/22 (木) 17:00
竹下文子「木苺通信」偕成社
満足度:★★★★★
木苺谷の四季を綴ったファンタジックな24の物語。
「私」は木苺谷に移り住んでまだ日が浅いらしく、谷の人々や狼のトプに谷での生活について教えてもらいながら、日々の暮らしを楽しんでいます。
色とりどりの明りが灯るランタン野菜、化石が奏でるオルゴール、鈴のような音で話す<香草採り>の人々、花びらを詰め込んだ打ち上げ花火、雲のレストラン、笛吹鳥とカスタネット鳥、焚き火をして過ごす冬の午後、薔薇園の香り高い薔薇、夢の中へも飛んでいけるたんぽぽの綿毛、そして夕焼け窓。色彩に溢れ、五感を目一杯刺激する描写のオンパレード。季節毎の行事も楽しそう。
木苺谷ではカレンダーも特殊なようです。カレンダーを作る人によって、季節を感じるセンサーが違ってたり、拘りがあったりするのでしょうか? 何にせよ、自然を観察する目と自分の時間をしっかり持っていそうです。木苺谷に倣って、一般的なカレンダーとは別に、自分だけのカレンダーを作ってみたら面白いかも!
木苺谷での生活がいかに心豊かなものか、想像しては私も木苺谷の住人になったつもりになって、一緒に楽しみました。
竹下作品では「風町通信」が大好きなのですが、「木苺通信」も負けず劣らずお気に入りとなりました。どちらも風を感じさせる、爽やかなファンタジーです。
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魔法使いが落ちてきた夏
07/02/01 (木) 00:33

タカシトシコ「魔法使いが落ちてきた夏」理論社
満足度:★★★★★
魔法物語の好きな小学生のカナは、母から魔法使いが描かれたポストカードをプレゼントされる。その夜夢の中で、カナはポストカードとそっくりの魔法使いを助ける。翌日、その魔法使いが天井を突き破って家の中に落ちてきた。
異世界の魔法使いたちがこちらの世界にやってきて、熱い戦いを繰り広げます。あちらの世界には黒(ダーク)、白(セント)、中立(ノンカラー)の三つの集まりがあり、戦士や忍、魔術師たちは皆いずれかに属しています。黒の魔術師・阿修羅は白の魔術師に命を狙われる身。夢の中で助けられ、こちらの世界で再会したカナや、友人である黒の僧侶・伊邪那美の助力を得ながら、3000名の兵士を引き連れてきた白の司祭長と戦います。こっちに来て初めて見たはずの物さえ、魔法と組み合わせて使いこなしてしまうなど、頭の良さと順応力の高さを発揮する阿修羅。友人思いで、やっぱり機転のきく伊邪那美。阿修羅も伊邪那美も、女性でありながら漢前! 二人のカッコよさに惚れ惚れしました。魔法の呪文も格好良いので、真似したくなっちゃいます。特にワイン猫の呪文は、マスターして遊んでみたいものです。アルコールと言えば、阿修羅がカナに作らせた「南の月」というカクテルも美味しそうでした。
白の企みも気になるし、中立の人たちも登場させて欲しいし、目覚めたばかりのカナの能力がこれからどう育っていくのかも見守っていきたい。そして、なんと言っても阿修羅と伊邪那美が活躍する話が読みたい! 続編の構想があるようなので、一日も早く本になって欲しいです。
この年になってさえわくわくするのですから、子供時代に出会ってたら作品の世界にどっぷりのめり込んでいたでしょうね。本当に楽しい作品でした。
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カラワンギ・サーガラ 完全版
07/01/26 (金) 23:26

津守時生「カラワンギ・サーガラ 完全版 全3巻」角川スニーカー文庫
1 密林の戦士(ラグ・カオヤイ)
2 犠牲の神
3 神と人の物語(カラ・ワンギ・サーガラ)
満足度:★★★★★
スーリヤは夏期休暇を過ごすため、叔母のアスカがいる惑星マサラを訪れた。本来、地球など銀河連邦に加盟する惑星が、文明レベルの低いマサラと接触することは重大な連邦法違反。しかし、マサラの密林の研究が莫大な利益に繋がると判断した企業が、密かに研究所を設置していた。また、18年前、スーリヤの父が謎の失踪を遂げたのもこの惑星だった。
スーリヤが到着した夜。研究所が超人的な力を持つ何者かの襲撃を受ける。一方で、スーリヤはマサラ人の少年に連れ去られてしまう。
信仰の対象となっている巨木(カラワンギ)の正体、スーリヤの出生の秘密、カオヤイたちの戦いぶり、試練を強いられる恋人たち、マサラの秘密、人間の身勝手さなど、内容が盛り沢山で読み応え充分でした。
特に興味を惹いたのはカオヤイの存在。宗教的中心でもある戦士・カオヤイは、テレパシーを持ち、一般の人々よりも強く、たくましく、美しく、誇り高く、そして優しい。戦闘モードになると身体の形状が変化します。そう、まるで変身ヒーローものみたいに。しかも改造人間じゃなく生身。変身ポーズもないので時間のロスもなし(笑) 変化してラグ・カオヤイになると攻撃力防御力がアップするため、カオヤイ同士の戦いは凄惨を極めます。そうかと思えば、非常に繊細で不器用な一面を垣間見せるんです。カオヤイであるがゆえに弱音を吐けない彼らが、地球人であるアスカの言葉によって癒されるシーンは、特に印象に残りました。慈愛に満ちた心でカオヤイたちを包み込むアスカは聖母のよう。彼女がモテモテなのも道理です。「"カオヤイ"に恋している」というアスカの言葉には、非常に共感できました。ギャップに弱い私は、"カオヤイ"にハートを鷲掴みにされてしまいましたから。
カオヤイも強いけど、女性陣も強さの点では負けてません。精神的な強さを持つアスカ、女傭兵のコルネラ、そしてゼロ船長。ゼロ船長は出番こそ少ないものの、圧倒的な存在感、というか天性のカリスマ性を持つ人物でした。(実はそれも訳有りだったりします)
三巻とも外伝が収録されてますが、特に最終巻の外伝は本編の後日談であり、ゼロ船長の秘密が明かされ、「喪神の碑」(レヴュー)と「三千世界の鴉を殺し」を繋ぐ役目も果たしているので、要チェックです。
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十一月の扉
05/08/25 (木) 22:23

高楼方子「十一月の扉」リブリオ出版
評価:★★★★★
父の転勤によって家族は東京へ引っ越すが、中学2年生の爽子は冬休みまで『十一月荘』で下宿することに。『十一月荘』は部屋の窓から双眼鏡を覗いていた時に見つけた、赤茶色の屋根の白い家。憧れの場所での新しい生活に、爽子は胸を弾ませる。
『十一月荘』の住人は、家主である閑(のどか)さん、建築士の苑子さん、馥子(ふくこ)さん・るみちゃん母子・・・下は小学1年生から上は60歳くらいまでの女性が4人。女性ばかりだとお節介な人や口煩い人がいそうですが、ここの住民にそんな心配は無用。さらっとした性格と相手を気遣う良識を持ち、相手の領域に踏み込み過ぎることなく必要な時は助け合う、と絶妙な距離を保ちながら共同生活を送っています。(その分、お隣の鹿島夫人が賑やか~) たった2ヶ月とは言え、中学生の少女が一人で下宿するには申し分のない環境です。そして、忘れてはいけない人物がもう一人。高校の英語教師だった閑さんに英語を習うため週2回『十一月荘』を訪れる、爽子より一つ年上の耿介(こうすけ)くん。思春期の少年少女ですから、日常の中に突如現れた異性は意識しちゃいます。淡い想いが甘酸っぱくても可愛らしく、妙にくすぐったかったです。
『十一月荘』で暮らす間に「心が煩わされることなしに何か一つのことをやろう」と決めた爽子は、お気に入りの『ドードー鳥のノート』に物語を書き始めます。登場人物は周囲の人々をモデルにし、生活の中で見聞きしたことを物語に仕立てた作品が、作中作『ドードー森の物語』。観察力と想像力に溢れた物語で、絵本にしたら面白そう。爽子の創作部分が現実とシンクロして驚くシーンが何度かありますが、それって爽子本人も気付かない洞察力によって未来を予測していたのかなぁ、などと思ったのですが。(流石にそれは深読みでしょうか)
先程「心が煩わされることなしに・・・」と書きましたが、爽子は心を煩わせる問題――家族(特に母親)との関係――を抱えていました。今時珍しいくらい素直な爽子が、冷たく厳しい目で母親を見ていることにびっくり。でもまぁ、娘に疎んじられても仕方がないというか、『十一月荘』の自立した女性とは対照的な母親なんですけどね。爽子だけではなく、同居人たちにしても耿介にしても、問題を抱えていることが追々分かってきます。もしかしたら、双眼鏡を覗いていた爽子の目に『十一月荘』が飛び込んできたのは偶然ではなかったのかも。と言っても、『十一月荘』が特に何かをしてくれるわけではなく、ただそこに建っているだけ。存在するだけで安心感を与える「場」ってありますよね。『十一月荘』もそういう「場」のような気がします。
多感な年頃の少女がかけがえのない出会いを通して成長する物語ですが、せっかくの出会いも自分から一歩踏み出す勇気がなければ、一瞬すれ違っただけになってしまうのですね。
作中の季節が晩秋から初冬だけに妙に人恋しくなる作品でした。これは11月になって秋の空気を感じながら読んだほうがよかったかなぁ。再読する機会があったら、絶対11月に読もう!
この本は、たらいまわし14でつばきさんが「時計坂の家」とともに紹介されていたものです。高楼さんの作品って本当にいいですね。本格的にファンになりそう(^^)
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時計坂の家
05/07/31 (日) 22:29


高楼方子「時計坂の家」リブリオ出版
評価:★★★★★
従姉妹のマリカから手紙が届き、フー子は夏休みを祖父の家で過ごすことになった。古い港町・汀館の時計坂を登りつめたところに時計塔があり、その近くに祖父の家がある。そこで、祖父はお手伝いのリサさんと暮らしていた。何か不思議なことが起きるのを期待する、フー子12歳の夏。
懐中時計が開く時、窓の向こうに緑の園が広がる・・・和製「トムは真夜中の庭で」と呼びたくなる作品です。
7年ぶりのマリカとの再会を喜び、マリカに惹きつけられるフー子ですが、期待したほどマリカと共に過ごせないことにがっかりしていました。そんな時、不思議な懐中時計と緑の園を見つけ、亡くなった祖母の髪飾りを発見。マリカの従兄・映介と仲良くなり、生前の祖母や時計師・チェルヌイシェフについて調べ始めるのです。
まず、坂の上から見下ろす海やジャスミンが生い茂る庭など、情景の美しさに心奪われます。そして、ファンタジックで謎に満ちたストーリーが、冒険心をくすぐります。さらには、淡い恋心がとても微笑ましいのです。
フー子のお祖母さんって、おきゃんで、自分に素直で、時代を先取りしていて、本当に可愛らしい人ですね。もっとも、家族は振り回されて大変だったでしょうけど。
平凡で真面目なだけと自己評価していたフー子ですが、フー子自身も知らなかった自分を発見したことで、何かが変わっていきそう。そして、不思議でいっぱいの12歳の夏は、一生忘れられない思い出になるんでしょうね。
沢山の手品を見せてもらったような読後感に大満足。突然ノーマークの人物にスポットが当たったときは驚きました。
本の見返しの絵は、スカーフの模様なんですね! 私が読んだのは図書館から借りた本なんですけど、誰かが迷路から脱出しようと試みたらしい跡が(^^ゞ
この本は、たらいまわし14でつばきさんが紹介されていて興味を持ちました。その後四季さんのレヴューを拝見して、ますます読みたくなりました。で、実際読んでみると、期待以上に素敵な作品でした。季節的にもぴったりでしたしね。高楼方子(たかどのほうこ)さんの作品は初読みでしたが、お気に入りの作家さんになりそう。ぜひ他の作品も読んでみたいです~。
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ユルユルカ 薬屋探偵妖綺談
05/05/02 (月) 20:00

高里椎奈「ユルユルカ 薬屋探偵妖綺談」講談社ノベルス
評価:★★★
高遠の視点から見た病院の怪事件。一方、薬屋三人組は妖怪のお祭りに出掛けるが、秋に百合泥棒の疑いがかけられてしまう。
今回はケルト神話がモチーフ。あとがきによると、
「薬屋が妖怪であるが故の綺談、探偵風味」
なのだそうです。謎解きにはそれほど重点を置いていないと宣言してるわけですね。
高遠サイドと薬屋サイドの事件は互いに絶妙な絡み合いを見せているのですが、どうせ本編から外れた作品なら、思い切って人間サイドを削り、妖怪祭り一色にしたほうが楽しそう。
高遠親子の関係にも変化があり(ただ息子の仕事についてくのはどうなんだろうなぁ^^;<次郎パパ)、今まで謎だったあの人のバックグラウンドにも触れ始めてきました。シリーズもいよいよ佳境に入ろうとしているのでしょうか。
「忘れたい過去は未来を作る自身への戒め。忘れて欲しい過去は未来を縛る他者による足枷」(P.300)
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蝉の羽 薬屋探偵妖綺談
05/05/01 (日) 20:00

高里椎奈「蝉の羽 薬屋探偵妖綺談」講談社ノベルス
評価:★★★
群馬の山奥にある庵治川村は、外界から良い具合に隔絶された平和な村。ところが、突然倒れたかと思うと植物が生えてくるという不可思議な現象が村人を襲う。
シリーズも節目となる10作目だけに、人の植物化にトンネルの歪みと、最初から大きな力を感じさせる奇怪な現象が続きます。このシリーズ、ファンタジー色がどんどん強くなってきてますね。伏線も張ってあるし、ミステリと言えない訳じゃないんですけど・・・うーん。
それにしても、庵治川村を救ったのがアレだなんて! 思わず笑ってしまいました(笑)
裏表紙の紹介文に
楽園は、想像力の数だけある。
とありますが、読了後にこの言葉の重みがよく分かります。、「生きる」ということは楽園を探して彷徨い続けることなのかなぁ、などと感慨に耽ってしまいました。
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セレーネ・セイレーン
05/04/30 (土) 20:00

とみなが貴和「セレーネ・セイレーン」講談社X文庫ホワイトハート
評価:★★★★★
「心(ソフトウエア)」は科学者のカリが開発、「身体(ハードウエア)」は医療部長・メグが提供したDWロボットをエンジニアのJ・Jが改造。21世紀初頭の月面開発基地で、自律性人間型ロボット・ドーンは誕生した。やがてドーンの中にはある種の感情が芽生え始め・・・。第5回ホワイトハート大賞佳作受賞作。
カリ、J・J、メグをはじめ基地の人々に愛されているドーン。しかし、回想の途中で数行挟み込まれた現状には悲劇的な匂いが。幸せだったはずのドーンの身に何が起こったのか。どんな展開が待ち受けているのか気になり、ぐいぐい惹き付けられました。
「EDGE」シリーズで巧みな心理描写を披露している著者ですが、デビュー作である本書でもその実力を存分に見せてくれます。人間の言葉や態度に喜んだり傷ついたり、未知の感情に戸惑ったり。淡々とした語り口ながらも、揺れ動くドーンの心は人間さながら。また、J・Jがドーンのメンテナンスを行っているシーンは、妙にエロティシズムを感じさせるのでドキドキしました。
自我を持つロボットが目指すことと言えばただ一つ。後半は本書のテーマに向かって一気に加速していきます。様々なタイプの切なさがオンパレードの作品でしたが、特にラストの切なさは胸に迫りました。
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芙路魅 Fujimi
05/04/29 (金) 21:49

積木鏡介「芙路魅 Fujimi」講談社ノベルス
評価:★★
猟奇殺人の犯人が、警察によって包囲された屋敷の地下室で消えた。一体どこへ消えてしまったのか?
講談社ノベルス20周年記念密室本の一冊。
裏表紙に「本格ミステリ」とありますが、これはホラーですね。犯人消失のトリックがあるので、かろうじてミステリとしての体裁を保っているようなものですが、肝心のトリックに思わずうげーっ。
同じ犯人が関与してると思われる19年前、13年前、7年前、9日前の事件には、2パターンあるようです。犯人にとって意味を持つ(指輪絡み)事件と、隙間を衝いて魔物が流れ込んだ事件とに。そのため、事件の統一性に欠けているように思われました。また、ページ数の関係なのか説明不足のところも。
とにかく私には、後味の悪さばかりが目立つ作品でした。
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鬼神伝 神の巻
05/04/29 (金) 16:34

高田崇史「鬼神伝 神の巻」ミステリーランド
評価:★★★
「鬼の巻」から半年が経った、宵山の日。純は小野篁によって再び平安時代へ呼び寄せられる。鬼神たちが純の力を必要としているのだ。
貴族と鬼神の戦いが続いてるところに、阿修羅王まで参戦。純が現代に戻っている間に、戦いはより激化していたんですね。そんな中、貴族が企てていた『神のウロコ』計画が実行に移されようとしています。
朱雀大路の広さや亀石の解釈は、非常に衝撃的でした。これには鯨統一郎氏もびっくりでしょう(笑) 歴史ミステリの部分もあるのですが、全体的にはファンタジー色が強くなっている印象を受けました。戦いのシーンで飛ばしすぎたためなのか、ラスト(純とある人たちのご対面や現代に戻ったところ)では、感動するどころかしらけてしまいました。
P.116で海邪鬼が出題したろうそくの問題の答えが、書いてませんよね。なんだか気になるなぁ。
「鬼の巻」での海神から純への宿題も、読者が自分で答えを見つけろってことですか?
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