伊坂幸太郎「死神の精度」文春文庫
死神たちは、人の死を見定めるためにやってくる。1週間の調査の後、担当部署に可否を報告する。可の場合は死の実行を見届ける。それが死神の仕事。
死神・千葉が出会った対象者6人の1週間。
いやもう、これは「死神」千葉のキャラに尽きますね。人間にもその死にも興味を抱くことなく、淡々と自分の仕事を遂行するクールさは、さすが死神。かと思えば、人間が作ったミュージックをこよなく愛し、仕事の合間にCDショップ通いではなく、CDショップ通いが目的で人間界にやってくる。そのギャップが可笑しくて。私の勝手な思い込みかもしれませんが、死神には特定の物に執着しないイメージがあるので尚更です。人間じゃないのに、どこか人間臭さを感じさせるじゃないですか。
日本語のレトリックに疎く、会話が頓珍漢になるところからも、コミカルな印象を受けます。おかげで「死」を扱った話にも関わらず、じめじめすることも重苦しい雰囲気になることもなく楽しめました。
千葉が出会った6人には6通りの人生があるように、作風もそれぞれに趣向を凝らしてありました。任侠物風、ミステリ風、恋愛物風、ロード・ノベル風など。私はやっぱりミステリ風な「吹雪に死神」が好きです。雪の山荘で連続殺人事件という如何にもな舞台設定といい、死神が探偵役という珍妙な役回りといい、伏線といい、ミステリファンにはたまらない遊び心がいっぱいでした。
千葉が「可」と報告したケースは、余韻がすごく残ります。読者をちょっぴり感傷的にさせたところで締める、幕引きの上手さが際立っているからでしょうね。最期のシーンまで描かれていないのも正解ですね。死神が関与する死は事件か事故なので、対象者の最期を詳細に書くとグロイ描写になる可能性もありますから。
この作品の続編はないんでしょうか。千葉の再登板でも他の死神が主人公でもいいから、またこの世界観に浸ってみたいです。
実は私、「オーデュボンの祈り」を半分程で挫折してるんです。なんだか読みにくくて。以来伊坂作品は敬遠気味でした。でも、気が向いて手にしてみたこの作品は、読みにくさなど感じる間もなくあっという間に読了。伊坂作品は長編より短編のほうが読みやすいのでしょうか?

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